山形満が遺した木と漆の仕事



2024年5月31日、山形満さんという一人の木工作家がこの世を去りました。
確かな技術に裏打ちされた美しさが際立つ作品たち。その作品を前にすると、これから新たに生み出されるものがないことに寂寥を感じずにはいられません。
玄想庵では昨年、山形さんの個展を企画していましたが、突然の訃報により一度はこの企画展を断念しました。しかしながら山形さんをご紹介くださった陶作家の柴田雅章さんから、山形さんが個展のために進めてくださっていた準備や出番を待っていた作品たちをなんとか世に出し、多くの方にご覧いただける遺作展を行いたいというお話を頂戴し、ご遺族様の同意を得て今回の「山形満が遺した木と漆の仕事」展開催の運びとなりました。
長年山形さんを支えてこられた奥様にお話を伺いましたが、山形満さんは寡黙な方で、ご家族にも自分の仕事について多くを語らなかったそうです。そのため、この遺作展に向けて工房を整理する際に初めて目にしたスケッチや資料もたくさんあった、とのこと。
今年6月にその仕事場を見せてもらいました。
大切に使い込まれたたくさんの工具。



用途に合わせて用意された大小様々な鉋や鑿



これから何かになるために準備されていた材


制作途中で棚に保管されていたもの
完成することがないことが惜しまれます。

必要なものがあるべき場所にきちんと収められ、整然と管理された工房の様子から、山形さんの真面目な仕事ぶりが垣間見えます。
完成した作品のデッサンも多数残されていました。

この度の作品展では山形さんが遺した素晴らしい作品をご覧いただけるだけでなく、ご購入も可能です。また、これまでの仕事をまとめた冊子もご用意しています。冊子に掲載している写真の一部は山形さんとご縁の深い建仁寺で撮影しています。


山形さんは「作ったものは使われて初めて命が吹き込まれる」という信念を持って木工に携わってこられた方です。できるだけ多くの皆様に、山形満さんの遺した仕事を手に取り、その良さや素晴らしさを感じてもらえる機会となることを願っています。
山形満デジタルカタログ→ https://craftcatalog.jp/yamagata-mitsuru