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桐山浩実「青竹の籠」展〜竹林から生まれるカタチ〜

2025年3月15日(土)〜19日(水)、青竹工房桐山の桐山浩実先生による玄想庵ギャラリー企画展を開催致します。

桐山先生は奈良県柏市で生まれ、現在は大分県竹田市で「青竹工房 桐山」(https://www.aotakekobo-kiriyama.com/)を構え、ご活躍されている青竹細工の作家です。

柳宗悦が提唱した民藝(民衆的工芸)の精神に共鳴し、確かな基礎技術のもと竹林での竹の伐採から籠編みに至る全ての工程を担った制作を行う傍ら、田畑を耕す半農半工の暮らしを30年以上続けておられます。

仏教に「身土不二」という言葉がありますが、これは「身と土、二つにあらず」…つまり人間の体と人間が暮らす土地は一体で、切っても切れない関係にあるという意味で、桐山先生はこの言葉を理念として掲げ、素材の全てを工房周辺で採集し、地採地産を旨としています。

そのため、作品の素材として使うマダケはもちろん工房周辺の城原産です。生育している方角や年数、色みの違いなどを見極め、最適な材を厳選して伐採しています。採集箇所は未開の山奥であることがほとんどのため、足場もおぼつかない場所や遭難の恐れもあり、命懸けの作業になります。カゴの持ち手や縁などに使うオオツヅラフジも全て山塊にて採集されています。素材の見極めと、それを生かして制作することをとても大切になさっています。

また、昨今ではSDGsが叫ばれ、世界的にも様々な分野で未来のために持続可能であることが重要視されていますが、桐山先生はそれよりもずっと以前から、竹が地下茎を伸ばしながら3ヶ月程で成竹となる驚異的な植生を持つ持続性豊かな素材であることに魅力を感じ、青竹細工に取り組んでこられました。作家としての精神性の高さが感じられます。

今回の展覧会では凛とした佇まいで日常生活を彩ってくれる作品と出会えるだけでなく、桐山先生の技術の素晴らしさを間近で感じられる青竹箸の実演もご覧いただけます。

青竹は縦、横ともにまっすぐな箇所が少なく、ほとんどに反りや曲がりがあるため、箸材としての良材は1本の竹から多く取れないのだそうです。箸削りの前に規格を揃えるだけでも一苦労ですが、削りにも高い技術が必要です。その難しさは細工師の技能が箸削りに始まり箸削りに終わると言われるほど。工程自体はシンプルですが、竹の特性を知り、高い精度で見極め、刃物の研ぎやさばきなどの扱いを含む熟練の技が要求されます。

そうして機械や鉋で仕上げず、手削りで生み出された青竹箸の美しさは目を見張るものがあります。竹特有の硬質な表皮のため箸先を細く削り出しても折れず、20年以上に渡っての使用が可能です。角を4面取りした後に6箇所の糸面取りするという繊細な10面取りを施しているため、持ち触りも柔らかくなっています。

また、青竹は時が経つにつれて少しずつ水分や色が抜けていきます。この過程で、横幅が縮んで最初よりも細くなりますが、手に馴染んでゆっくりとアメ色に変化した、また違う味わいあるものへと変化していきます。使い始めから青みがある程度抜けるまでは使用後の管理に少し気を遣う必要がありますが、美しく育てる楽しみがあることも青竹の魅力の一つと言えます。

ちなみに竹には横幅は変化するが縦の長さは全く変化せず狂わない、という性質があります。昔から物差しに竹が使われてきたのは、この特性のためです。素材を理解した先人たちの知恵を感じます。

3ヶ月で筍から成竹となる竹。その旺盛な成長力は男性を、節間の空洞は女性の子宮を表すとされ、太古から神秘的な植物として崇められてきました。

昨年大河ドラマで話題となった紫式部の源氏物語の中で「物語のいでき始めの祖なる竹取の翁」と書かれ、日本最古の物語として名高い竹取物語のかぐや姫は、光る竹の中から生まれ、3ヶ月で成人になります。この物語の中にも、竹の特性と神秘性が感じられます。

日本の竹細工の歴史は遡ると2000年以上になると言われています。長い歴史や伝統に想いを馳せながら、高い技術の光る作品を日常生活に取り入れる。豊かな時を彩る作品をぜひご覧ください。

桐山浩実 経歴

1963年 奈良県生まれ

1979年 国立奈良高専化学工学専攻から体育大学

1984年 福祉施設勤務 この頃より木工を始める

1992年 大分県立別府高等技術専門学校竹工科卒業

     大分県由布市に青竹工房

1993年 日本民藝公募展優秀賞受賞

1994年 日本民藝館展初入選

1996年 日本民藝館展 民藝協会賞受賞

1997年 べにや民芸店(東京)にて個展

2001年 朝日現代クラフト展 地域部門 招待出品

2002年 全国編組工芸品展 毎日新聞社賞受賞

2004年 スペースたかもり(東京)にて個展

2006年 中学校美術科教科書掲載

2009年 全国編組工芸品展 準大賞受賞

2010年 工藝マエストロ(長野)にて個展(以降隔年開催)

2012年 日本民藝館展 民藝協会賞受賞

2014年 大分県竹田市に工房を移す 工藝ギャラリー併設

     横浜髙島屋にて現代の職人たち展

2015年 日本橋三越本店にて個展

2016年 伊勢丹新宿本店にて個展

     日本橋三越本店にて個展

2017年 日本橋髙島屋にて民藝展

2018年 伊勢丹新宿本店にて個展

     リビング・モチーフ(東京)にて日の明子セレクト「日本の道具展」(2020,2024)

2019年 銀座三越にて個展

2020年 日本橋髙島屋・大阪高島屋にて民藝展

2021年 Tea &Space基幸庵(佐賀)にて個展

2022年 市川籠店(東京)にて個展

     日本橋高島屋にて個展

2023年 東京インターナショナルギフトショー出展

     日本橋高島屋・大阪高島屋にて民藝展

2024年 松坂屋名古屋本店にて個展

     京阪百貨店(大阪)にて企画展

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